LINEと自社アプリ、ユーザーはどっちを好む? 【「EC事業者のLINE活用、エンドユーザー(生活者)はどう捉えるのか」vol.1】

岡田 風早

私たちはLINEヤフー認定パートナーを務めているため、事業会社からLINEと自社アプリの比較について聞かれる機会がよくあります。いつもは立場がありますが、今回は仕事のことを忘れて、よく買い物をする1ユーザー視点では、実際にどう思っているのかを書こうと思います。

本当はユーザー視点で実施したいと思いながらも、「LINEやるぞ!」「アプリやるぞ!」というようなトップダウンの社内政治に巻き込まれてプロジェクトを進めてしまうことってないでしょうか? 理想論だけで仕事を進めることは簡単ではない世の中ですが、今日だけは、煩わしいことは忘れて読んでみてください。

ユーザーは何を基準にするか

LINEか自社アプリか、実際に利用する1ユーザーとしての結論から言うと、本当に「どっちでもいいかな」と思ってます。入り口となる面にこだわりはなく、ブラウザで使い勝手に不満がなければブラウザでも全然問題ないですし、ユーザー視点でメリットがあればLINEや自社アプリを選びます。メリットとは、わかりやすい特典なのか、ブラウザより便利なのか、特別な機能があるのかという視点です。

LINEと自社アプリには、いわゆるブラウザと比較される面としての機能と、メールと比較される通知の機能があります。この2つを中心に、まずは自分がECを展開している企業のアプリをダウンロードした理由を書き並べてみます。

1.インストール・会員登録で500円クーポンプレゼント(短期的なインセンティブ)
2.特定の商品の抽選に参加できる(継続的なインセンティブ)
3.ログイン状態が維持される(継続的なインセンティブ)
4.店頭で会員バーコードが発行できてポイントが貯まる(継続的なインセンティブ)


1の場合、1回購入したら継続してアプリを使うことはほとんどありません。一番ハードルが高いインストールと会員登録をクリアするという意味で取っ掛かりとしては良いかもしれません。

2や3の場合は、アプリを使うことでユーザー側に継続的なメリットがあるので、1と組み合わせることで総合的にユーザーがメリットを感じやすくなります。

ではLINEの場合はどうでしょうか。

1.友だち追加やID連携で500円クーポンプレゼント(短期的なインセンティブ)
2.特定の商品の抽選に参加できる/複数応募対策(継続的なインセンティブ)
3.LINEで会員登録やID連携でサイトへ1タップでログインできる(継続的なインセンティブ)
4.店頭で会員バーコードが発行できてポイントが貯まる(継続的なインセンティブ)


アプリとほとんど変わらないですね。アプリをダウンロードしなくていい分、会員登録時の心理的ハードルは下がります。それ以外は好みの違いと言っても過言ではありません。

個人的に一番残念だった体験は、アプリで会員登録する時にパスワードのセキュリティ要件(記号も入れて〜文字以上)が高いかつ確認で2回入力しないといけないにもかかわらずペーストができず、複雑で長い文字列のパスワードを2回手打ちしなければならなかったことです。これはアプリ独自の会員登録フォームの仕様の問題でした。

LINEか自社アプリかという比較は企業視点で見た場合だと、運用のコスト面や、既に先行投資した金額を回収したい、決裁者の好みなど複合的な要素が絡んできますが、ユーザー視点ではどれもまったく関係のない話です。

手軽に始めるならLINE、ブランド色をより出したいならアプリという感じでしょうか。

ユーザーにとって、ブラウザよりも使いやすいのか、明確なメリットがあるのかというのがLINE・自社アプリを活用する上で共に大切な点です。ただし優越をつけるためにあえてブラウザ側でのサイト機能を制限されてしまう(例えば先行販売や再入荷通知など)と、ちょっとげんなりしてしまいますね。

通知手段としてはどう思っているか

メルマガの開封率が下がりつつある昨今、LINEや自社アプリは通知手段としても選ばれます。通知を受け取るにしても、LINEで受け取りたい人もいればアプリで受け取りたい人もいるわけで、ブランドの「好き度合い」によって受け取るチャネルを分けたい人もいるでしょう。

LINEは通数課金があるので配信頻度が抑制される傾向がありますが、アプリの場合ガンガンプッシュ通知を送ってくるケースもあります。

通知の体験で良かったなと感じたのはZOZOですね。好きなブランドに関連する通知やお気に入りの商品の値下げなど、ユーザーが受け取りたいだろうという通知が中心に送られてきます。こういう通知は心地良く便利だなと実感できます。

逆に通知の体験で残念に感じたのは某スポーツブランドと某フリマサイト(アプリ)です。某スポーツブランドはとにかくメルマガ的な通知が多く、個人的に重要度が低いものがたくさん送られてくる印象です。こうなると通知自体をOFFにしてしまいます。

某フリマサイト(アプリ)も同様ですが、売買関連の通知は重要度が高いので、画面への通知はOFFにして通知のバッジ数だけ表示しています。事業としては売上を伸ばしたいという当たり前の側面もあり、この辺の匙加減は単純に少なければいいというものではないので非常に難しいと思います。

まとめ

結論は最初に書きましたが、LINEや自社アプリなどユーザーの入口となる面に関しては決済方法と同じでユーザーが選べる数が多いに越したことはなく、ただ決済と違い運用・保守に人的コストがかかる分、選択と集中という考え方もあります。

単純な好き嫌いもあるので、LINEと自社アプリの両方用意をしておけば、ユーザーが使い勝手や好みで選べること自体が良いユーザー体験となります。

またユーザーはブランドに特別な思い入れがない限り、使いやすいか、何かメリットがあるのかというシビアというかシンプルな観点で選ぶので、「〇〇で囲い込み」みたいな企業視点の傲慢な考えは捨てて、担当者がユーザー側に立って心地良い体験が提供できる面を増やしていくことが結果的に自社ブランドのファンを自然に増やしていけるキッカケになるでしょう。


著者

岡田 風早 (Kazahaya Okada)

ソーシャルPLUSのカスタマーサクセスとして2015年にフィードフォースに入社し、プロダクトマネージャーを経て執行役員に。2021年9月にソーシャルPLUSが分社化して現在の役職に至る。
LINEヤフー社のTechnology PartnerとしてLINEログインやミニアプリなどのAPI活用、Sales PartnerとしてLINEのCRM活用、またShopify Partnerとしてエンタープライズ向けのShopify × LINEやShopify Flow・メタフィールドの活用、データ設計を得意とする。

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